歴史に残る超バカ売れハリウッド映画。
世間に一大ブームを巻き起こし、猫もシャクシもウチの母親も「でかぷりおがイイのよ〜!!」状態にしてしまいました。なのでまったく興味無かったのですが、先日機会があって、今さらながら冷やかし半分に観てみたところ、
意表をついてけっこう良い映画じゃん!
と感じ入ってしまいました。
この映画に向けられた非難はいろいろありますね。荘厳な史実をあんな恋愛ドラマ+娯楽アクションに変換するなとか、ヒロインのわがままクソ女ぶりが見るに耐えないとか、憎まれ役のキャラクター設定がいくら何でもひどすぎるとか、CGに力を入れすぎだとか、レオ様でなくてもっとしぶい俳優だったら許せるとか、まー、それこそ百花繚乱。
で、実際、それらの批判はそれなりに当たっていると思うんです。個別に見ると各々は確かにごもっともというか、いわゆる「ハリウッドくささ」満載な内容に対し文句のひとつもつけたくなるというか。だが、しかししかし、そんな足ばらいを食らいながらもなお残る「深み」がこの映画にはあると思います。
では、それはいったい何なんでしょう??
ひとつには、いきなりやってきた人生の総決算の場で「善悪の境界線に立たされた人」の姿が端的にきっちり描かれていた点があります。レオ様カップルの奮闘とは別に。
で、境界線でぎりぎり「善」に転んだのが、例えばあの、いったんは金持ちからワイロを受け取ったけどあとで突き返し、さらに暴徒化しかけた三等船客を射殺してから自決してしまう一等航海士で、逆にぎりぎり「悪」に転んだのが、「とりあえず周囲にいた女性や子供が全部救命ボートに乗った」のをいいことに自分もそそくさとボートに乗ってしまった船主のおっさんと申せましょうか。双方合わせて「免罪符とはいったい何か」ということを実にみごとに表現していました。もし自分ならどっちだろう、現状だと実は船主のおっさんと同程度かなー、それではいかんなと思ってしまいます。うむむ!
ということで、この両名が、裏の『タイタニック』MVPと言えるかもしれません。
ちなみにこの一等航海士の描写に関してはモデルとなった人物の遺族からクレームが来たため、20世紀フォックス社が多額の賠償金を払ってカタをつけるという、いかにもアメリカンな後日談があったそうです。(史実の検証については充実内容のこちらを参照!)
この航海士の演出の件に関しては「ハリウッド的な製作態度」そのものの是非を問う感じでけっこう意見が分かれるでしょうね。まー、いくらでも否定的な材料を集めることはできますが、個人的には敢えて「是」としたいところです。なぜならば、あれは、いささか不器用ながら真面目に「人間性の本質」に突っ込もうとした結果のように思えるからです。だから、「史実をゆがめている!」というわりには不思議と不快感が無いし。
そんなわけで、他の映画評でも指摘されていますが、航海士に関しては架空の人物を設定したほうが良かったのかもしれません。ここはシナリオの勇み足が裏目に出てしまったというべきか。
またもうひとつの、より重要な「深み」ポイントは、「キャメロン監督の志」にあると思います。
キャメロン監督は深海調査艇で実物のタイタニックを目の当たりにした瞬間、言いしれぬ衝撃を受けたそうです。「これまでの自分のアプローチが間違っていたことに気がづいた。撮影そのものよりも、船の感情的な意味合いを捉え、船と、そこに乗っていた人たちに何が起きたのかを捉えることの方が、もしかしたら大切だったのだ」と。
ここで生じた使命感があの映画になるわけですが、彼は、これまでのタイタニック映画で採られていた伝記的・教訓的な「過去の再現」ではなく、自らの目で見た海底のタイタニックの遺物たち.....朽ち果てた船内の調度品や散乱する日用品たち.....を通じて何が見えるか、さらには何を感じるかという、言ってみれば「過去へのオマージュ」の徹底的な具現化の道を進んだわけです。
そういう意味で、本作の過度ともいえる物理的考証の徹底ぶりは、その場で「生きた何かを再構築するため」の、ある意味呪術的ともいえる目的意識のためかもしれません。それはそれでなかなか素敵っす。
で、まあ、その結果があのラブストーリーなのかよオイ!? と嘆く向きも多いでしょうけど、個人的には、本来向いてなさそうな分野で不器用ながらよく頑張っていたように感じたし、例の航海士の演出もそのコンセプトから生じたんだろうと思うので、あまり批判する気分にはなれません。まー、確かに下層船室からの脱出劇など「ちょっとこれ別の映画なんじゃねーか?」と思いましたが(笑)、そうしたこともみな、あの老婆となったヒロインが語る現代のパートで昇華されているように思うのです。
どこかのサイトで「あの老婆が実はそもそもボケているかもしれず、だから彼女の証言なんて怪しいものよ」という意見が冷笑的に語られていました。でも、ところがどっこい、それって実は逆に「再現ではなく全身全霊のオマージュ」という、この映画の最大の魅力を証明するポイントになるのではないでしょうか?
だから個人的には、あの老婆こそ物語の真の主役ではないかと思います。彼女が海底のタイタニックに帰って行くラストシーンは、キャメロン監督が深海調査艇の中で感じた「何か」の最終的な到達点としても秀逸でありました。
うーむ、やられた。まいった。「通俗的ハリウッド大作映画」をうかつにバカにしてはいけないな。
さて、『タイタニック』はちょうど19世紀的な伝統社会が滅びゆき、逆に資本万能主義と全体主義が台頭してくる時代の葛藤を象徴するドラマだ、などとも言われます。いささか類型的な演出でしたが、確かにそういう味わい方も出来ますね。
そして、その「後」の時代の大西洋を舞台としながら、やはりひそかに同様に「呪術的」な要素を持つ映画が、実は他にもあったりします....(と、実はここに続く!)


実は、ここに続いた先が、Uボートで、未見だった為、慌てて戻って参りました(^^;
タイタニック、一時ものすごく、はまりました。
正直、ジャックとローズの恋物語なんか、まったく、どうでもいいのですが、
次に何言うか、台詞、覚えちゃってたくらいです(笑)
少なくとも、彼ら二人の恋愛部分以外は、史実に忠実であった(らしい)ところに(パンフ見る限り)、わしづかみにされちゃいました。
だから、1度目の鑑賞では感じなかった感動を、2度目に受けて以来、ばかみたいに観てしまいました。
おっしゃる通り、自殺した航海士さんと、まんまと生き延びたおじ様はとても印象に残ってます。
碧洋のハートを海に沈めた時のおばあちゃんローズも。
紳士をアピールしながら、迫り来る波に目を大きくしていた男性や、最後まで演奏を続けた楽師さんたちが印象に残る、映画でした。
『タイタニック』が沈没した時に、そこにいた人々が主役になってましたね!
TBありがとうございました。
またどうぞ、よろしくお願いします。
TBありがとうございました。
賛否両論ありますが、私はとてもいい映画だったと思います。ラブストーリーの部分も切なくて好きだし、様々な人々の生き様が描かれていてとても感動しました。
こちらもTBさせて頂きます。ついでにブックマークもさせてください♪
あの一等航海士も船主も印象にありますが、婚約者や姐御肌の夫人も印象的でした。
多くの人の人生を背負ったタイタニックが半分に折れて沈んでいく様はいまでも目に焼き着いています。
FORREST
コメントありがとうございました!
>1度目の鑑賞では感じなかった感動を、2度目に受けて以来、
>ばかみたいに観てしまいました。
これはポイントですよね。単なる量産型の恋愛映画だったら「繰り返し観て味わいが深まる」ということは起こりえないので、やはり根本的に大人の視点からの鑑賞に堪えうる作品だったということなんでしょう。
ブームだった公開当時、マスコミ報道で「ディカプリオ」「究極のラブロマンス」という宣伝文句だけを見て「ああいう映画を観ること自体がダサい」と思い込んでいた自分の狭量さをいまさらながら反省しているところです。でもまあ、今さらとはいえ気づいてよかったとは言えるけど(笑)
>紳士をアピールしながら、迫り来る波に目を大きくしていた男性
おお、これは確かに印象的でしたね。真にせっぱつまったときの人間の行動は意外とこんなものかもしれない、という感じで妙に説得力がありました。
ということで、こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします♪
★lucky777_swさん
TB&コメントありがとうございました!
また、お褒めいただきありがとうございます。
>ラブストーリーの部分も切なくて好きだし、様々な人々の生き様が
>描かれていてとても感動しました。
上記のいきさつもあり、個人的にラブストーリーの部分は全く期待してなかったんですが、予想に反して(爆)けっこう良かったと思います。にしても、あの婚約者はすごかったっすね。「あのー、そんなに極悪だと体に毒ですよぉ」とおもわず心配になってしまいましたよ。ほっほっほ(爆)
というわけでブックマークしていただきありがとうございます。ただしあたしの名前は「REALLIFE」ではなく「桜樹ルイ16世」なので、ヒマな時にでも直しといてください。こちらのHP本体のリンクページからもリンクさせていただきたく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします♪
★chibisaruさん
TB&コメントありがとうございました!
>あの一等航海士も船主も印象にありますが、
>婚約者や姐御肌の夫人も印象的でした。
まったくですねー、実はこの2人は対照的なキャラクターながら、双方合わせて「アメリカ代表」になっていた感じで、そのへんの演出の妙もなかなかグッドでした。要するにヨーロッパ伝統社会に対する感情の表れ方ですけど、婚約者が象徴していた「鬱屈したコンプレックス」に対し、あのアメリカン姐御おばちゃんの「田舎者で何が悪いのよ、え!?」という開き直り方が素敵でした。やはりアメリカンたる者ああありたいのー、と思わせますね。姐御はあのとおりの性格で実在の人物だったそうですが(笑)
★FORRESTさん
コメントありがとうございました!
以前からご愛読いただいていたとはまことにありがとうございます。
また、掲示板を拝見しましたが、ウチのブログを紹介していただいていて、まことに感謝に耐えません。
しかし『男たちの大和』、やはり吾輩も気にしておりました。でもって『タイタニック』で感銘を受けた瞬間にあの和製映画への不安が頭をもたげていたんですが、いやー、やっぱりやばいのですか。やばいんでしょうね。これはなんつーか、別の意味でいやが上にも期待が高まります(爆)
ということで、実際これは観に行ってレビュー書くつもりでおりますので、乞うご期待であります。年内に書くかどうかは自信ありませんが。
あと、そちらの掲示板でFORRESTさんが一瞬話題にしていた『ゾフィー・ショル最期の日々』、ドイツ映画祭2005で観ましたがあれはほんとに良い映画でした。今回の『タイタニック』評の伝で言えば、ゲシュタポの取調官が善悪の境界に立たされる展開がなかなか絶妙で素晴らしかったです。ちなみにそれも史実に即した内容なんだそうで、改めてゾフィー・ショルという人の霊的パワーの凄さが偲ばれます。
というわけで、今後ともよろしくお願いいたします♪
好き嫌いを別にして、ぜひ『フォレスト・ガンプ』もみてみてください!!!
いつもながらドイツ人がドイツから書き込んでいるとは思えない内容で素敵だ!!
>『タイタニック』を見れば、やはり『フォレスト・ガンプ』も見るべきだと思います。
そっかー。これは必見なのね。これも吾輩「超有名だから」という理由で観てなかったんだよな、そういえば(爆)
ということで、改めて観てみます。でもってたぶん感想も書くでしょう。乞うご期待!
感想は期待しています♪
うっす、『フォレスト・ガンプ』は絶対に観るぞよ。松千代閣下も「あれはええよー!」と言っていたし!
まー、ドイツ人として生まれたことと、ドイツ的であるかどうかは別問題よね、そういえば。
★とろとろさん
TB&コメントありがとうございました!
>話し的は、どうしても主人公二人のラブストーリーより
>他の乗客の姿に目がいくんですよね。
同感です。Web上の映画評を見ても、「最初に観たときはSFXの凄さやラブストーリーが印象的だったけど、再見したら、周囲の重厚な人間ドラマに心打たれた」という感想がけっこう多いです。本作の劇場公開時のリピーター率の高さに鑑みると、監督としてこれはまさに会心の展開と申せましょう。つーか、これって良い映画ですよねーホントに。
それはそうと、とろとろさんのキャメロン監督評『ターミネーター』にあった「タイムトラベルものとしては矛盾点もありますが、勢いと情熱にあふれた映画だと思います」という表現はすばらしいです。吾輩の場合、どうしてももっと凝った言い回しに走りがちなんですけど、それでは実は食材の鮮度が落ちてしまう気がして(笑)
『ターミネーター』はタイムパラドックス問題以前に「なぜリンダ・ハミルトンが女子高生なんだ!?」とかいう超謎があったりするわけですが(爆)、そういったツッコミすべてに対して「それがどうした」の一言で答えきれてしまうあたりがグレートだと思います。
マライさんがあげられた『フォレスト・ガンプ』ですが、私のHNの由来です(笑)。コミカルな作品でありながら、同時に人生の重さを感じさせる名作です。エンドロールの重厚さには毎回圧倒され、その場に釘付けにされてしまう自分がおります。私も桜樹ルイ16世さんの鋭いご感想大いに期待しています。期待外れでも、優しく斬り込んでやってください(苦笑)。
FORREST
そうですよね、まさに「善悪の境界線に立たされた人」って言葉、ぴったりです。映画を観ながら、私だったらどうしちゃう?どうしちゃうのよ〜?と真剣に悩んでしまいました。
先日はあのようなつたない記事にTBありがとうございました。
TB返させていただきましたね♪
記事のほう拝見いたしましたが、
同じ映画について語っているとは思えないほど、
内容の濃いレビューですね。
大変感嘆いたしました!
私もこのような記事を書けるようになりたい思いましたね。
>善悪の境界線に
そうですよね。私もその通りだと思います。
私の言いたいことはこちらにすべて掲載されていますので、
私が今更語るまでもありません(笑)
大変素晴しい記事にめぐり合えて感激です^^
本当にありがとうございました。
はじめまして
加奈子です
タイタニックは大変いいものです
とても感動しました