ハリウッド製の潜水艦戦映画。
ハードコアな戦史マニアからは『U・ボート』との比較でくそみそにけなされている一方、世間一般では「まさに男のドラマ。サスペンスフルでなかなかグッドでした!」という声価もある程度得ているらしいので興味を持ってみたのですが.....
残念、燃えない!
うーむ、確かに「よくできている」のですよ。スペック的には.....だがしかし、何かが足りない!
喩えは悪いですけど、大人向けの漫画で、ベッドテクニックに絶対の自信を持つキザ男がいくら奥義をつくしても本命の美女がまったく感じてくれなくて、「なぜ? なぜだ! なぜ、このオレ様の絶妙の(以下略)」みたいな場面がよくありますけど、なんかああいう感じです。
といっても吾輩、いわゆる「ハリウッド的手法」を毛嫌いしているわけではないんですよ。たとえば『タイタニック』では充分「感じ」ましたしねー(爆)
というか、その『タイタニック』での経験があるから、このように印象が違うのが何故なのか、というのがむしろ興味深く思えたわけです。
ともに「ハリウッドくささ」満点な内容。商業主義的なゆがみも多し.....しかし『タイタニック』には、キャメロン監督の男気信念がありました。
(海底で実物のタイタニック号を目の当たりにした瞬間) これまでの自分のアプローチが間違っていたことに気がづいた。撮影そのものよりも、船の感情的な意味合いを捉え、船と、そこに乗っていた人たちに何が起きたのかを捉えることの方が、もしかしたら大切だったのだ。
ここで生じた情熱が、あの作品に言い知れぬプラスアルファを与えていたことは『タイタニック』評に書いたとおりです。つまり、「どういうつもりで製作したか」ということですね。では一方、『U−571』のジョナサン・モストウ監督の場合、そのへんいかがでしょう?
彼(モストウ監督)が『U−571』を作ろうと思ったきっかけが、サンフランシスコのフィッシャーマンズ・ワーフに行ったときに”第二次世界大戦潜水艦ツアー:2ドル”という看板を見つけたことだというから驚く。まるで子供のように微笑ましいエピソードを持つ彼は『U−571』で実物大の潜水艦を製作。子供の頃から大のオモチャ好きだった彼は、「今は映画会社が〈本物のオモチャ〉を提供してくれるからとてもうれしい」といっている。彼にとって映画は”大きなオモチャ箱”のようなものなのかもしれない。
(eigafan.comの「ターミネーター3特集」より)
そうですか。なるほど。よくわかりました。
上記したたぐいの漫画では、「こ、このオレ様のいったい何が足りないんだ!?」というかんちがい男の叫びに対し、女性が悲しげに「....愛....」とかつぶやく場面がありがちです。これと同じで、結局のところ、「男」は描けても「人間」が描けないというか、そのへんの底の浅さが感覚的ににじみ出てしまうのかもしれません。
しかしそういう「底の浅さ」+「器用さ」というのは、図らずも昨今のアメリカ商業文化にマッチしている感じですね。あまり深く考えずに「英米人=人間」で「ドイツ人=鬼畜」として恐怖を商品化する図式は、一見古いようでいて、実はマイケル・ムーア監督が「最近特にひどくなった米国の精神構造のゆがみ」として取り上げた問題そのものですし。
さて、『U−571』にまつわる意見で目立つのは、「エンターテイメントとしては良くできている」という表現です。ちなみにモストウ監督といえば、あの『ターミネーター3』でも同じ評判でした。
しかしよくよく考えてみると、エンターテイメントとして真に素晴らしい作品は、そのような言い方をされないように思います。
本物の戦記エンターテイメントといえば、そう、例えば『眼下の敵』。
あの映画で描かれる戦争は確かにリアルではありませんが、それを理由に作品の価値が否定されることもほとんどありません。なぜでしょう。まあ、自明といえば自明のことかもしれませんね。
「心に残る素敵なプラスアルファ」の乏しい映画は、やはり「作品」ではなく「商品」にすぎないでしょう。ハリウッド的かどうかということとは無関係に。
今回、なにやら『U・ボート』以前に『タイタニック』との比較でそれがよくわかってしまった気がします。
けっこう興味深い話です。
<<おまけ話>>
『U−571』と『タイタニック』は、縁遠いようでいて実はちょっとしたつながりが多いです。双方ともビル・パクストンがボス役で出てくるとか、キャメロンの『ターミネーター1・2』の後にモストウが『ターミネーター3』を撮ったとか、また、「史実をゆがめた」ために英国から非難の嵐にさらされたとか。最後の件、『U−571』についてはコチラ、『タイタニック』についてはコチラをご参照ください。
うーむいかがでしょう?
一見、『U−571』の場合はブレア首相を激怒させながらも大戦中の英海軍の当事者を味方につけてうまくまるめ込んだように思えますが、こういう見解を見る限り、まさにそここそが大英帝国の思うつぼ、なりゆき全体が実は「改めてアメリカ植民地人どもに対して文化性の優位を見せつける」ための文化政策の一環にすぎないという気がしないでもありません(笑)
まー、そのへんはヤクザの恫喝術と何気に似ているのですが、『タイタニック』問題で頑として賠償金を搾り取ったのと対照的にこういう「大人な態度」を見せる場合、えてして人間的にかなり相手を見下しているのが英国の老獪さというものです。そこがまた魅力的なのでありますな。



ボンジョビがかっこよかったです。
わたくしも「Uボート」は観ましたが
あれと比べるのは無茶な気しました
そもそも、あんな泥臭さはなくスマート
同じ戦記物なのに、描くコンセプトが違うし
これは現代のヒューマンドラマだと思いました
日本が、すぐお涙映画にしたがるように
昔のアメリカの戦記映画は、すぐ正義と愛をだしたがる(^^;)
オリバーストーン監督のころから面白くなってきたように感じています
修正しようと思ったら、ちょっと不可みたいですので
このままでお願いします<(_ _)>
コメントありがとうございました!
ボン・ジョヴィ、一曲歌う間もなくいきなり死んでましたねー。さすがです。ちなみに彼は有名人としての特権をふりかざさず、一般のオーディションを受けて合格したそうですが、顔でバレバレになってたらあまり意味がないような....(笑)
★べるじゅらっくさん
コメントありがとうございました!
>わたくしも「Uボート」は観ましたが
>あれと比べるのは無茶な気しました
そうっす。『U・ボート』とはそもそも世界が噛み合いません。ということで今回は同じハリウッド娯楽大作の『タイタニック』との比較で斬りこんでみた次第です。
というか『タイタニック』評に書いたように、結果的にはむしろ『タイタニック』と『U・ボート』の相関を考えたほうが意味がありそうなのが面白いところです。うむー!
>昔のアメリカの戦記映画は、すぐ正義と愛をだしたがる(^^;)
興味深いのは、だいたい必ず「正義vs悪」の図式であって、「善」の居場所がないあたりですね。そのへんがアメリカの精神的課題を考えるひとつのポイントです、とか書くと話が果てしなくズレはじめるのでやめときますが(笑)
しかしその中にあって『眼下の敵』はオススメですよ。マジで。
>なにか、変な事書きましたっけ?w
いえいえ、そんなに変なことは書いてないと思いますが????
たぶんあまり気にしないでもおっけーです。
★煮炊さん
>ぶははは!
今回の記事のどこでウケたかによって、笑いの価値も変わりますねー。いやはや。
わたし個人はあまり戦争映画が好きじゃなくて(なら見なきゃいいんですけど)、
特にアメリカがアメリカの正義を掲げるような戦争映画は苦手で、
見る前からかなり懐疑的に構えていたので、
この作品は、ある意味、期待を裏切らない予想通りの低評価になりました(笑)
今さらですけど、最近知ってショックだったのは、
『ハリポタ』シリーズの制作国がアメリカだってことです。
原作と舞台と俳優がイギリスだからてっきりイギリス制作だと・・・。
よく考えれば、あのスケールはいかにもアメリカっぽい。
なんだかんだいって、概してアメリカ映画は嫌いじゃないんです。
そのエンタメ性はさすがです。
ごめんなさい・・・(^^;)
正しくは、yokoです〜。
U-571とタイタニックのつながり、興味深く読ませていただきました(^^
船と映像が良いだけに、本当に勿体ない映画だと思います。
明快な正論を、一見別次元の切り口から
抽出してみせる批評力に、いつも敬服しております。
原作版の「Uボート」は海洋冒険小説としても傑作だと思いますが、ドイツ戦争文学として双璧を
なすのは、早川からハードカバーで出ていた
「フォッケウルフ戦闘機隊」
(ひどい邦題ですが、原題は「裏切りの翼」だったと思います)
である、と思います。
おそらく閣下の着眼点に沿う内容だと思いますので、もし未読であればお勧め致します。
以前、邦画の「男達の大和」について触れておられましたが、私はとりあえず見に行って来ました。まあ、なんにせよ得るものはあると思って。
・・・なんといいますか、白色彗星帝国に突っ込んでゆくヤマトを、実写で見せられたというのが
感想の全てです。西崎某がプロデューサーとして現役であれば、きっと喜んで企画に参加したことでしょう。春樹氏の言うように、これが邦画の到達点であるならば、いろんな意味で『やばい』と思いますが・・・
ところで、閣下は「木更津キャッツアイ」というTVドラマシリーズをご存知でしょうか?
あの大塚英志氏が賞賛した傑作ドラマで、アニメ的ディフォルメした人間描写を実写でやったという点で前記「男達の・・・」と共通しますが、それ以外については全てが逆のベクトルの作品です。
もしよろしければ、閣下にも御覧頂いて是非、感想を伺いたいと所望致す次第であります。
TB&コメントありがとうございました!
>特にアメリカがアメリカの正義を掲げるような戦争映画は苦手
それはそうですね。問題は、他国を必要以上に貶めて自分の正当性を主張するところというか、「自分の目に見えるものが世界のすべて」っぽい図々しさというか、そういうところにあるんでしょうか。でもそういう濁りのない「アメリカンパワーの主張」はけっこう魅力的なので捨てがたいですね。たとえば米独一騎打ちの潜水艦映画でも、上掲した『眼下の敵』は超アメリカンな内容のくせに最高でした。ドイツでも評判が良いらしいです。
>今さらですけど、最近知ってショックだったのは、
>『ハリポタ』シリーズの制作国がアメリカだってことです。
おうおお、そうだったのですか! 実は原作は読んでるけど映画は観てない(べつに嫌がってるわけじゃないけどなんとなく)のですが、やはり、「あ、この瞬間が日産車だね」みたく米国くささが感じられるものでしょうか。妙に大味になるとか。
『ハリポタ』は英国の文芸作品の中ではひねくれ度が低いので、比較的他国フォーマットでも映像化しやすいかと思うのですが、そのへんはいずれ確認してみようと思います。
★太郎じぃさん
TB&コメントありがとうございました!
>U-571とタイタニックのつながり、興味深く読ませていただきました(^^
ありがとうございます。本作は『U・ボート』と比較されていることが多いですが、そもそも鑑賞の観点が違うため、噛み合った議論にならないことが多いですね。そこで今回、同じ「ハリウッド流」の中での「真摯さ」比較によって、本作の真価というか「正体」をあぶりだしてみた次第であります(笑)
★松千代閣下
買い物はですねー、まー、「その他」でしょうね。ええ、今回はやりません。
★萩久保紀雄さん
おおおお、以前からご愛読いただいていたとはありがとうございます!
また、お褒めいただきありがとうございました。
>「フォッケウルフ戦闘機隊」
あー、これは残念ながら未読であります。古書店で見かけたらゲットしておきますね。
>「白色彗星帝国に突っ込んでゆくヤマトを、実写で見せられた」大和映画!
なるほど! 実は昨日観てきたのでその印象はよく判ります。しかしそう考えると、あの『宇宙戦艦ヤマト』って、なんだか今思うに凄い内容ですよね。沖田艦長が霊界交信で古代進に特攻をうながすとか、よくも悪くも昔は基準がおおらかだったということでしょうか。そのへんの問題意識のあり方、というか神経過敏さの変遷ぶりというのは、実は考察に値するテーマかもしれません。
ところで春樹くんは、あれを「邦画の到達点」とか言ってるんですか!? すばらしいたわ言ですねー。
>「木更津キャッツアイ」
これは情報をありがとうございます!
実はですね、以前マライさんが『真夜中の弥次さん喜多さん』を観に行きたいと力説していて、まあ、けっきょく観に行かなかったんですが、気にはなるんで調べたことがあるんです。そのとき、あの映画の監督が『木更津キャッツアイ』の脚本を手がけて評判がよかったことも目にしていたんで.....いやー、なんとまあ、ここでその話が出てくるとは。
ということで、偶然に見えて偶然を超えた意味のつながりを感じずにはいられません。是非観て何か書こうと思いますです。乞うご期待!
★ぷりんつ・あるぶれひとさん
コメントありがとうございました!
>海中の生存者に機銃掃射を浴びせんじゃろ・・・普通
これはアメリカ独善主義を象徴するシーンですねー。しかし世の中うまくできているもので、こういった「いかにも悪しきアメリカイズム」そのまんまの内容と思わせておき、最後の最後、9回裏ツーアウトから大逆転する恐るべき作品もあるのです。
http://www.page.sannet.ne.jp/toshi_o/check_list/1988_92/endersgame.htm
↑これです。ここでこうしてネタバレしても興がそがれることのない稀有な作品なので、機会があれば是非ご一読をオススメします。ちなみに今出ている版では表紙がもっと高級っぽい感じになっています。しかし思えばこれが、吾輩が「SF」というジャンルで最後に読んだ良書だったかもしれないな.....
>トーマス・クレッチマン
この人は役柄でイメージが固定されないので、映画業界的には使いやすいでしょうね。そのへん、ユルゲン・プロフノウのツブシの利かなさとはいかにも対照的です。うーむ、艦長にはもうひと花咲かせてほしいものですが。
『U-571』は自分も見ました。
何かが足りない感じを僕も受けました。
自分は多分『Uボート』の鮮烈さが先入観としてあったからでしょうね。